にゃんこ男子は鉄壁を崩す


「ごめーん。あずちゃん……この埋め合わせは必ず……」

「うん、そうね。クリスマスイブの日の昼食、由比子ちゃんの奢りでイタリアンでも奢ってよ」


「由比子さんッ……俺には……」


 そうやって聞かれると虐めたくなる。だって何かを期待してるのが見え見えで。面白いったらない。


「そうだな、あずちゃんにはイタリアン奢るわ……火伊くんは……仕入れ増やしてあげよっか」


 ホントは彼がそっちよりも『二人で食事』とかそういうの期待してたのわかってる。でも、私はビーグルの困った顔が見たい。だから、ついつい意地悪しちゃうんだ。


「あ……ありがとうございます」


 言葉とは裏腹に明らかに落胆した様子のビーグルを見て、少しだけ、ほんの少しだけ可愛いと思った。


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