にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「なんだか残念そうだね」
「そ、そんなことは!……俺もクリスマスイブのお昼一緒してもいいですか」
希望に満ちた顔で私に近づいてくるビーグル。やっぱりちょっと困った顔見てみたい。困らしてやれ。
「ええー? じゃ、仕入れ増やすのはナシだよ」
「きゅ!」
「きゅ?」
ビーグルの口がおちょぼ口になった。眉間には何本もシワが刻まれている。なんだよ、やっぱり文句あんのか。文句じゃなくてもっと困った顔してみてよ。
「究極の選択ですね!」
…………なんだ、お前は。仕入れと私とどっちが大事なんだ? かなり面白くない。そんなに私のこと好きじゃないんじゃない? いつの間にか少しだけ痛みがひいていた私は即座に「アンタのお昼はナシ」と彼の襟首を掴んで彼を引き寄せ、容赦なくピシャリという。
「ええーーーーーー!!」
「声が大きいです、火伊くん」
「さぁて。由比子ちゃんの(あずちゃんの分)奢りも決まったことだし、火伊くん、雪かき行こうか」
この人こそ、鬼かもしれない。あずちゃん、あなたは素晴らしい。ドSの心をしっかりわかってます。あずちゃんは火伊くんの会社の仕入れが増えるのもナシになって、しかもお昼もナシになって、それなのに雪かきを手伝えと。
天使のような微笑みの下には鬼が住んでおりました。