にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「うう、痛い……」
「由比子さん、頑張って」
ビーグルは私が痛いと言う度に励ましてくれる。私は不本意ながら、ビーグルの助けを借りてタクシーに乗り込もうとしていた。
心配そうなビーグルの顔が見えると、こんなちっちゃいオトコでもこんなに愛情があるのなら、彼氏でもいいのかもしれない、なんて心が少しだけ揺らぐ。
だからってそんなこと口が裂けたって言わないけど。
タクシーに乗り込んで痛みがない体勢を探し当てるまでに相当痛い。前の座席のシートを掴みながら「ふえー……ん……痛いよぉ」と無意識に言葉が出てしまった。
「……ぶッ!」つい私が泣き言を言ったら、ビーグルが横で堪えきれなくなった笑いを噛み締めるように顔を背けて肩を揺らして笑っている。
私の不幸がそんなにオカシイのか、ビーグル!