にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 いや、何が来たんだ、何が。何も来ておらん。寧ろ、腰に激痛がきた。タクシーが段差を超えたり、カーブを曲がったりするたびにすごく痛い。


 さっきのビーグルの言葉は聞かなかったことにしよう。もう何年もそんな甘い言葉を掛けられていないから、どんな反応をしていいか、わからない。しかもぎっくり腰で弱ってる女にそんな言葉吐いたって全然、甘い雰囲気になんないぞ、ビーグル。


 ……いや、甘い雰囲気なんか望んでいないけども。5度目の激痛が私を襲った頃、タクシーは私のマンションの前まで来た。私はビーグルの言葉に反応できないままお金を払い、ビーグルの助けを借りてタクシーを降りた。


 できるだけ、マンションの管理人やお隣のミィコには知られたくない。だってぎっくり腰っておじいちゃんみたいじゃん? 


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