にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 ビーグルは私に肩を貸しながら、私の部屋の前まで送ってくれた。顔を顰めながら、ハンドバッグから鍵を取り出して玄関を開けてもらう。


「火伊くん、ホントにありがとね。雪かきも頼んでしかも家まで送ってもらって……玄関まででいいよ。早く仕事に戻ってください」

「ちゃんと家の中まで送ります! 大変でしょ、由比子さん!」


 ホントは家の中まで送ってくれたら、どんなに楽か。でも、そんな簡単に家の中に入れたりしたら、私は鉄壁じゃなくなってしまう! 私はそんなに簡単な女じゃない! よっぽどじゃない限り、隙なんて見せないのだ、鉄壁女は! 


 朝の不意打ちのキスは私の隙のせいじゃないと思う。

 あんなの予想できないでしょ。



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