にゃんこ男子は鉄壁を崩す

釣れるのか、ツンデレは



 今日、結局、工房へ行ったら大雪のために閉めることになり、帰ることになった俺は折角時間が余ったので久しぶりに実家に寄った。

 両親には感謝してる。マンションに住みながら、今の好きな仕事に就けているのは彼らの理解とマンションの提供があったからだ。歯科医の父に甘えている、と言われればそれまでだけど、まだまだヒヨっ子の俺の給料といえば、普通の俺の年代の一般男性の給料と比べれば、格段に安い。

 そのため、くれる、と言われればついつい食いついてしまう。だから、感謝の意味を込めてたまにだけど帰ることにしている。


「父さん、家にいたんだぁ」


 父はソファで新聞を広げて読んでいた。俺の声で新聞を下げてニヤリ、と片方の口角を上げる。


「今日は元々、定休日だからな。なんだ、いちゃいけないのか」

「いけなくはないけど、珍しいな、って」


 俺は父の興味を引かないようにできるだけ普通の受け答えをした。俺が小さい頃は父のおもちゃは自分だったような気がする。子煩悩、といえば聞こえがいいが、常にからかわれ、遊ばれていた。気に入ったおもちゃを見つけるとついつい遊びだしてしまう癖はきっと父から受け継いでいる。


 父さんと話していたら、台所の奥からお手伝いさんと共に母が出てきた。

「あら、勝登、いつからいたの。勝手に上がり込んじゃって」

「……母さんの方がひどくね?」


「……うむ」


 父さんは唯一、母さんに弱い。クッと笑いを喉に押し込んだ父がまた笑いを堪えるように新聞で自分の顔を隠して読み始めたのだった。



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