にゃんこ男子は鉄壁を崩す
すき焼きっつーもんは。
まずは、醤油と砂糖でさっと味付けして焼いて食べる! 意外と北海道人は知らない。そのまま、煮込んだ野菜たちと一緒に食べるのが普通で関東に住む友人にまずは焼いてから食べるのが通なんだ、と言われてすごく驚いた覚えがある。
「由比子、まずは焼いて食べるんだよ」
「へ? そうなの?」
だからすき焼き用の鍋は肉を焼けるような材質の鍋なんだろう。……勝手な憶測だけど。肉を焼くと醤油と砂糖が絡んだいい匂いがぷわん、と広がった。胃が刺激を受けて鳴りそうだ。肉が好きじゃない、と威張る由比子も流石にこの匂いと空腹には勝てないらしい。
ゴクン、と唾を飲んだのを見逃さなかったぞ!
「ほい、由比子」
さっきの火伊さんと由比子の関係が気になる俺。もしかして、と思う。そうだとしたら、火伊さんは由比子が好きなんだ。由比子は……? 理由はないけど、なんだか、面白くない。ちょっと意地悪して由比子の位置からほんの少しだけ遠いところに肉が入った皿を置いた。
遠い場所に皿を置かれて悲しそうな由比子。
「……イタタ」
それでも無理をして肉にありつこうと、皿の前まで移動しようとしていた。俺の気持ちなど少しも知らない由比子が痛みに顔を顰めているのを見たら、やっぱり可哀想かな、なんて考えて由比子を助けるべく、俺は動いた。
「由比子」
「ん」