にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 手を貸してやろうと思って呼んだだけなのに由比子は身体をビクン、と反応させた。どうやら、今朝のことがあるから、相当警戒されているらしい。

 由比子は俺に腕を取られるとそのまま固まってしまった。


「肉、食べさしてあげるから、座ってなよ」

「う、うん」

 動揺したままの由比子は痛みに顔を歪めながらも素直にそこへ座った。


「肉さ、ふーふーって冷ましてあげよっか」

「結構です。もう冷めてるでしょ」


「由比子、もうちょっと可愛い言い方しな」


 ムギュ。

 頬を引っ張った。俺も由比子の壁を崩さない態度には飽きた。もう、初対面じゃないんだからちょっとぐらい心のシャッター上げてもいいんじゃないの。


 だけど、由比子は無表情のまま俺に頬を引っ張られたままだ。


「ヒィホ、ヒフ(ミィコ、肉)」


 頬を引っ張られたまま由比子が要求したのは松阪牛だった。


「……ホラ、食べなよ」

「うん」


 仕方なく、由比子に肉を与えると由比子の顔が少し緩む。やっぱり高級な肉は違うぜ。大して歯に力を込めなくている風でなくても肉がちぎれていく。かなり柔らかそうだ。


「な? 旨いだろ?」

「ん、美味しい」


 余程、旨かったのか、さっきまでの仏頂面はどこへやら。頬を染めてモグモグしている口は口角が上がっている。由比子の大きな目も心なしかいつもよりタレ目だ。由比子の機嫌もよくなったところで俺は思い切って気になっていたことを聞いた。


「なあ、由比子。その腰……どうしたの?」



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