にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 由比子は少し顔を曇らせると「雪かきで、ちょっと、ね」と言う。はっきり、『ぎっくり腰』と言わないのは何歳になっても乙女心は忘れていない、ということなのかな。


「ふぅん。どうやって帰ってきたの」

「知り合いの人に送ってきてもらったの。あ、ミィコ、冷蔵庫からビールとチューハイの缶持ってきてよ」

「おー」


 『知り合いの人って?』という問いかけをする理由が見当たらないまま、俺は冷蔵庫を開けた。冷蔵庫を開けるとアルコール度数の高いカクテルやビールが所狭しと入っている。

 料理はしていないのか、と言うほどに。だけど、野菜室を開ければ野菜がぎっしりと入っていて驚いた。肉がほとんど見当たらないところを見るとベジタリアンか。


 特にアボガド。なんでこんなに入ってんの?


「ちょっと、ミィコ。いろんなとこ開けないでよ」

「鍋飽きたから、なんかつまむものないかと思って」


「ああ、アボカド入ってるとこにモッツァレラチーズとトマト入ってるけど。って言ってもカプレーゼ(生のアボカド、トマト、モッツァレラチーズを薄切りにしてオリーブオイルなどと調味料を合わせたドレッシングをかけるサラダ)なんて今はこんなだから作れないけど」



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