にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 ベランダに出て私はすぐに後悔をする。いや、だってね? ベランダにはお隣さんのキッチンで焼いているサンマのいい匂いが換気扇から漂ってくる。


 ああ、どうして考えつかなかったんだろう。彼が帰ったらすぐにサンマを料理するであろう、ということを。もし、煮魚にしてもきっとこのベランダの辺りには煮魚の匂いが立ち込めていたに違いない。

 さっき食べたばかりのお腹がサンマの焼き魚の臭いに刺激されて、ぐぅ、と小さく鳴った。

 くそぅ……折角、気分を変えようと思ってベランダに出たのに、これじゃ余計にサンマが食べたくなった。



 私は冷たい風にあたるのをやめて部屋に帰ろうとすると――――



< 14 / 281 >

この作品をシェア

pagetop