にゃんこ男子は鉄壁を崩す


「由比子、じゃあ今日はお休みなんだから安静にしてるんだよ」と言ってそそくさと出て行ったミィコ。ミィコもアボカド好きなんだなぁ、なんて考えながら、テレビのリモコンのスイッチを押す。

 いつぶりくらいだろう。こんなにのんびり、テレビのニュースを見たのは。甘ったるい女子アナの声を聞きながら、私は久しぶりの芸能ニュースを見ていた。


 いつでも誰が結婚しただとか誰かが浮気して離婚しただとかそんな下世話なニュースばかり。それでも普段ニュースを見ない浦島太郎状態の私にとってはまぁまぁ面白い。


 テーブルの上には昨日の残ったすき焼きが食器に入れられてラップをかけてある。鍋は既に洗ってくれたようだ。……昨日、あのあと、起きて洗ってくれたんだ。意外と気が利くじゃん。


 傷んだ腰に手を当ててキッチンに向かう。ちょっとお腹が空いたから。すき焼きの残りに卵を落としてラップをしなおすと電子レンジにかけた。チン、と音がしてから電子レンジを開けると卵が半熟になって美味しそう。半熟の卵入りのすき焼きを見たら早くくれ、とでも言うように私のお腹がグゥと鳴る。


 タイミングいいな、私のお腹は。


「さて……いただきます」


 箸を揃えてすき焼きを口に運ぼうとしたところでまたアイツに邪魔された。


「由比子~……緒に御飯食べよ」


 ミィコ、一体君はなんなのかね? 一気に脱力する。そんな私の心の底に沈殿した疑問をミィコは気づく様子もない。いつだって勝手なんだから。どうやら、彼はおかずを一品作ってきたようだ。


 許してやるか。

 おかず一品あるからね。

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