にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 サッとでいい、サッとで。まだまだ腰は痛いから、ゆっくりじっくりお湯に浸かる余裕なんてない。できれば腰を真っ直ぐにして寝ていたいというのが本音だけど、明日は腰が辛かろうとも出勤したい。

 あずちゃんに迷惑をかけるわけにはいかないよ。意を決して服を脱ぎ、冷えたバスルームに足を踏み入れた。


「冷たッ……」


 くぅ~~~~……ただでさえ、冷たくなったバスルームの床は嫌なのに。かなりブルブルと震えながら、シャワーのお湯を出した。それだって最初はかなり冷たくて。温かくなるのに時間がかかる。

 その時間が腰の痛い私にはとても長く感じて、只管、『早く、早く』と心で唱える。それはお風呂に入るという一大事を早く終えたいのと、早く温かいお湯になぁ~れ、という両方があるけれど、『早く』の願いが強すぎてお湯を凝視している。

 瞬きもせず。

 ただ、只管に。


 …………来たッ! 来たッ! 来たッ! お湯キター! 

 腰は痛いけれどもその温かさにホッとしてシャワーを自分にあてるとやっと落ち着きを取り戻せた。お風呂が終わるとやっと明日に備えて準備をして寝ることにする。

 だってお店に立つのに臭いのは許せないけど、それ以外はまぁ。頑張ればなんとかなるでしょ。だから腰が痛いから、ご飯なんて二の次。食べれたら、そりゃいいけど無理して食べなくたっていい。

 朝はいつだか買った食パンがあるからいいし。

 勿論、用意してくれる人がいりゃそりゃ食べるけどさ。

 そんなこと言ったって用意してくれる人なんて……。


 
 やっぱり……自分で作るなんて面倒臭い。


< 146 / 281 >

この作品をシェア

pagetop