にゃんこ男子は鉄壁を崩す
ホッとしたようなため息をついた彼。私の目の前まで来てかなり緊張した様子のビーグルは「お、おお俺……行って、きます」と言って顔を近づけてきた。
「ちょ、火伊くん、顔近い。行ってらっしゃい」と言って顔を避けてビーグルを送り出そうとしたら、ビーグルはあからさまに口を尖らせた。
当たり前でしょ、なんでビーグルとキスしなきゃいけないの。新婚夫婦でもあるまいし。
「どうして俺はダメなんですか!」
「はぁ?」
「だって小宮さんにはいってらっしゃいのチューしてたのに! どうして俺はダメなんですか!」
「どうして……って……」
どうして、と言われると確かな答えってないかもしれない。
ミィコは良くてどうしてビーグルはダメなのか? ミィコは猫みたいだから? 気まぐれでキスしているような、好きとかそういうの考えてなさそうだから本当に純粋に挨拶みたいなもんになりつつある?
それに比べてビーグルは私に好意を抱いてくれているし、なんというか下心ありありな態度に引いてしまうんだろうか。だけど、それはあまりにもはっきりとしない感情でビーグルに説明したところで納得してもらえないだろうな、と思う。
「小宮さんは勝手にキスしてきたんだから! いきなりで強引だったから避けられなかったの!」
「!……強引なのがいいんですか」
「……そういうことじゃないッ!」