にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「朝から騒々しいわねぇ」
私とビーグルのやりとりをずっと休憩室の奥から観察していたらしく、騒々しいとか言いながらも含み笑うところを見ると、やっぱりあずちゃんはビーグルと私をどうにかくっつけようとしているんじゃないかと思えてならない。
「あずちゃんッ!……おおお、おはよう」
「35歳の女がキスの一つや二つで動揺しすぎよ、由比子ちゃん」
「そうです! いってらっしゃいのチューくらいしたって減りませんよ!」
あずちゃんの助け舟に調子づいて勢いよく乗り込んだ火伊くんは声高らかに目を輝かせる。これでチューできると思ってるんだろ。ミィコにしてるから安いチューだと思ってるんだろ。下心が顔から溢れ出てる君には絶対に鉄壁は崩さないよ?
「火伊くん、君、煩いよ」
「はい、これから掃除&品出しするから邪魔、邪魔~」
相楽 由比子の鉄壁は崩れない、と判断したあずちゃんがビーグルを無理矢理押して店から追い出そうとするが、それでもビーグルは叫ぶ。
あずちゃんにぐいぐいと押されながらも叫ぶ。
「あずささんッ! まだ、由比子さんにいってらっしゃいのチューをしてもらってま……」
「しつこい、火伊くん。しつこい男は嫌われるって知らないの」
追い出されようとするビーグルに私は追い討ちをかけた。勿論、ビーグルは言葉を失って涙目になる。
いいね、その表情。
お姉さん、そういう顔大好き。
恋愛感情じゃないけどね。
「~~~~ッ!」