にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「由比子の家にもあったでしょ、ティッシュカバー」
「あったけど! あったけど、全然可愛くないじゃん、コレ!」
そう、ミィコは私の家の洗面所に○ニーちゃんのティッシュカバーの代わりに置いていったものが私の手元にある。黒いレザーにはっきりと『YUIKO ドS 喧嘩上等!』とはっきり刻印されている。
……私はどこのヤンキーだよ。いつから私はヤンキーになったんだ。再び、怒りが沸々と沸いてくる。
「それ、返してよ」
「ヤダ」
ヤダって子供か!ブゥ、と頬を膨らませて○ニーちゃんのティッシュカバーを後ろに隠すミィコ。ちょっと可愛いけどそれとこれとは話が別だ。それを取り返そうとミィコに歩み寄るとまだ完治していない腰がまた痛み出す。
アタタタ……
腰を押さえて顔を顰めたら、流石にミィコも心配そうな顔で私の顔を覗き込む。
「返して」
「……ヤダ」
「……~~~~ッ……! もう、今日はまだ腰痛いし、帰る。治ったら、取りに来るから」
黒いレザーのティッシュカバーをミィコの部屋に置いて出てきた。心なしかミィコの表情が悲しそうだったんだ。追ってくるかな、なんて思ったけど、ミィコは自分の部屋から出てこなかった。
別に期待してたわけじゃ……ない、と思う。ただ……ミィコならしつこくあの黒のティッシュカバーを押し付けてくるかな、なんて思ったんだ。