にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 向かいには勿論、松川先生とアイツが。名前なぞ呼んでやらん。二度と呼んでやらん。そして、どうして断れないんだ、私は! 



 この断れない性格が悲しい。

 ものすごく悲しい。




 はっきりきっぱりあずちゃんのようにNOが言える女だったら! 



 飄々としているアイツをとっ捕まえて文句を言うことができる勇気のある女だったら! 





 今、こんな状況に陥ることはなかったと思う。私は背中を丸めて芋焼酎をちびちびと飲む。ああ、この姿勢が良くないのよね。



 背が高いのが嫌でつい癖で背中を丸めるようになってしまった。いや、わかってるんだよ、背中を丸めるのがあんまりよくないって。でも、背中丸めちゃったらおばあちゃんみたいだから、背筋伸ばした方がいいんだって。背骨が曲がっちゃうんだよっていうのは大人になってから気づいた。




 私が気づいたときにはもう大人。大人になった今では小さい頃からの背中を丸める癖はなかなか取れず、私自身に深く染み込んでる。





 背中を丸めながらも店内を見回した。和風モダンな造りに少し暗めの照明。高級住宅のなかにありそうな立派な庭園を思い起こさせる店内にまた頬を膨らませた。



 
 こんな場所を知ってるんだ、とかそういうことも腹立たしい。きっと今、何が起こっても腹立たしいんだ。


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