にゃんこ男子は鉄壁を崩す


「松川先生、今日すっごくわかりやすかったです~! ね、由比子さん?」



 あ、やっぱりコイツの前だと松川先生が相手だろうと仁衣菜ちゃん、可愛い女の子になっちゃうんだね。いや、勿論、普段から可愛いのだけれど。



「……はい……」

「相楽さん……でしたよね? 具合、悪いんですか?」




 突然、松川先生が私の顔を心配そうに覗き込む。大きな掌が私の額に触れた。



「え?」

「なんだか顔色良くないな、と思って。飲ませすぎちゃいましたか」




 驚いて慌てて猫背の身体を背中に定規を入れたようにピンと伸ばした。驚いて目を丸くして「い、いえ……」と言ったけど松川先生の顔はまだ心配そうだった。なんかすっごくいい人かも。



 現実に引き戻したのは皮肉にもコイツの言葉で。




「俺はまだ飲みたいな。俺、と先生は生でいいですよね。仁衣菜ちゃんと相楽さんは?」




「私はあんまり強くないのでルジェストロベリー・コラーダで」



 うわ、甘々、アルコールなんて入ってんのか入ってないのかわかんないようなやつ。見ただけで『うえッ』ってなる。




 仁衣菜ちゃんて実は結構お酒強そうだな、と思ったんだけど。


 男の前だと猫かぶるタイプ? 



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