にゃんこ男子は鉄壁を崩す
ま、そんなことどうでもいいけど。私は別に松川先生や目の前のコイツを狙ってるわけじゃない。だから、そんな可愛いの頼まないし。
「私、ルシアンで」
飲みやすいけどアルコール度数が高めのカクテル。口当たりがいいからすぐ飲みすぎてしまうのが難点だけど、今日はきっと楽しくない飲み会(合コンとも言う)だから、飲み過ぎるなんて有り得ないだろう。
仁衣菜ちゃんはコイツを狙っているわけだから、話しかける回数が多いのは当然だけど。でも、目の前でそれを見せられるとなんだか面白くない。
「仁衣菜ちゃん、醤油とって」
「あ、はい、どうぞ」
私の目の前を醤油が通過。目の前で仁衣菜ちゃんの指とコイツの指が僅かに触れ合う。たったそれだけのことだけど。
む、なんだかやっぱり面白くない。仁衣菜ちゃんと仲良くするコイツも。私のことを『相楽さん』と呼ぶコイツも。全部が腹立たしい。
私は手元のルシアンをクイっと飲み干した。