にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 ――――店を出るとひんやりとした空気が心地よかった。足がおぼつかず、フラフラとして側にあった電柱に思わず寄りかかった。



 うう、不覚。特に喋ることがなくてついつい目の前のお酒をどんどん飲んでしまった。楽しいときも要注意だが、とてつもなく楽しくないのも要注意なのだと気づかされた。



 思い通りに歩いてくれない足をどうにか動かそうとする。



「ダイジョブですかぁ、由比子さーん」

「大丈夫、大丈夫! なんのこれしき! お酒は弱くないっつーの……」



「ほら、僕の肩に掴まって」



 優しく私の手をとる松川先生に別に好きとかでは全くないけれど思わず、ドキン、と胸が飛び上がりそうになって若干酔いが覚める。かなりいい雰囲気だったのに背後から邪魔者の声がした。




「松川先生」

「ん?」

「奥さん、今日20時の便で旅行から帰ってくるんですよね?」



「ああ、そうだった。ヤバイ、ヤバイ。ありがとう、小宮くん。僕は急いで帰らねば」




「はい、先生。お気を付けて」




 ……なんですと?! 



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