にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 素早く仁衣菜ちゃんにお金を渡して歩き出すコイツ。仁衣菜ちゃんの顔を恐くて二度見ることはできなかった。



「ちょっと待ってよ……」

「何」



 『何』とか言って止まる気配ないじゃん。ずんずんずんずん、私の腰を抱いて駅へと向かう小宮。←決して前の呼び方はしてやらん。




「もう歩ける!」

「…………あ、そ」



 駅に着くとホームにはまばらだけど人がいる。それでも私は言わずにはいられなかった。いきなり手を離されたのでフラつく足元。その様子を見てコイツはフン、と鼻を鳴らし、また私は腕をとられる。




「いいって!……いや、あの……大丈夫だから」

「……そ。」



 少し声を荒げたので申し訳なく思って小さく『大丈夫だから』と言ったが、『そう』とか『そ』とか! 短く喋らないコイツに無性に腹が立ってきた。さっきの説明をしなさいよ?! 




 ホームに電車が入ってきて、乗り込んだら、ホームにいた乗客のほとんどは反対側の電車に乗る人ばかりだったらしく、私たちの車両には僅かばかりの乗客しか乗っていない。




 ガタンと電車が動き出してもコイツは押し黙ったままだ。電車が揺れる中、私は痺れを切らして彼に問いかけた。


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