にゃんこ男子は鉄壁を崩す
整った顔立ちの男の子は私がそういうのを予想していたようにククっと笑った。その笑い方もどうも韓に触る。私が懸命に断りを入れているにも関わらず、馬鹿にした態度はとても苛立つ。
「お姉さん、お金ちょーだい。それともお姉さんが遊んでくれる?」
何、その究極の二者択一。どっちもとっても嫌なんだけど? でも、有無を言わせないその整った顔立ちの青年はギリっと私の腕を強くつかみ直した。
「嫌です!……イタッ……」
「イタイだなんて、大袈裟だよ、お姉さん?」
途端に冷たくなった男の子の声音にヤバイと感じた。偶然、近所の家から人が出てこないかな、とか自転車に乗ったおまわりさんが来てくれないか、とか有り得ない状況を求めてみる。
少しだけアイツのことが脳裏を掠めたけどすぐに追い払った。……これって大声で助けを求めるべき? さっきのコンビニには100mも戻れば着く。大声を出せばわかるはずだ。
だけど、叫び声を聞いたからと言って店員が外に出てきてくれるとは限らない。一気に緊迫した状況になって足が震えた。
「……由比子! 待った……?」
男の子の背後から私の名前を呼んだのは、さっき帰ったはずのアイツ。
待ってなんかない、コイツのことなんて。
会いたいなんて思ってない、こんな奴。