にゃんこ男子は鉄壁を崩す
火伊 久瑠、その人だった。
ディスプレイに表示されていた人物は。
なんだってこんな時に。暗がりの中で何度も鳴り続け、その存在を主張するかのように光っているスマホ。出たくないけど、だからといって、着信の途中で電源を落とす勇気もない。
私はクッションの下にスマホを隠して自分は遠いところで膝を抱えてまた俯いた。すると、玄関のインターホンが鳴った。重くなった腰を上げてインターホンのディスプレイを見る。
「火伊さん……」
「俺です! ずっと電話かけても出ないし、心配で……お願いです、由比子さん、顔見せてくれませんか?」