にゃんこ男子は鉄壁を崩す
もどかしく。二人の想いはすれ違う
俺はどこかイラついてた。由比子が松川先生に対してオトコを意識していることにも、由比子の気持ちがイマイチ掴めないことにも。意地を張っていたかと思えば急に泣いたり。無関心だったかと思えば、他人のことに急に怒り出したり。
そのイラつきを鍵を強く握りしめた後、カゴの中に放り投げてぶつけた。はぁ、とため息を吐いてベッドに寝転がると隣の由比子の家のインターホンが鳴る。瞑ろうとしていた俺の目はパチリ、と開いた。
外で誰かの声が聞こえる。ああ、もしかして火伊さんかな、と思いつく。火伊さんは何をしに由比子の家に来たんだろう。
だからといってここで由比子の家に乗り込んだら、また変態扱いされそうだな、と自嘲気味に笑った。
それでも、火伊さんと由比子が一緒に部屋にいると思ったら、いてもたってもいられないくなってスマホを手に取る。トゥルル、と呼び出し音が鳴るとすぐに「はい」と電話の主が出る。
「仁衣菜ちゃん? 俺。今から会える?」