にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 周りの喧騒とは裏腹に俺たちのテリトリーだけ妙に重苦しい雰囲気。楽しい雰囲気なんて微塵もない。カンパリオレンジがやっと来て仁衣菜ちゃんは話し始める。




「由比子さんと小宮さんのやりとり見てたら……もう私と小宮さんは会うことないだろうな、なんて考えてました」




 意外な人物の名前に俺も驚いた。仁衣菜ちゃんと俺の間で由比子の名前が出るとは思わなかった。



「由比子? なんで? 由比子はただのお隣さんだし。だから、俺ここにいるんでしょ」




「普通、お隣さんのこと名前で呼び捨てにしますか? 私のことなんて未だに『仁衣菜ちゃん』なのに」




 めんどくせー。呼び方ってそんなに重要? 呼び方にこだわるなんて。小学生じゃあるまいし。これだから、こういう女は鬱陶しい。




 そんなくだらないことひとつで俺の仁衣菜ちゃんに対する温度は急速に下がる。もう俺の頭の中ではどうやって別れを切り出そうか、なんて考えてるし。




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