にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「それにあんな二人見せられたら、誰だって……」
そのあとの言葉が出てこないのはなんで? すごくイラついてくる。何か言いたいのならはっきり言えよって男なら胸ぐら掴んで言ってやるのに。
「あんなって何? なんもしてないでしょ」
「小宮さん気づいてないんですか。ただのお隣さんだったら、松川先生と由比子さんが不倫したって関係ないじゃないですか。いい雰囲気になったっていいじゃないですか。どうしてああいう顔するんですか」
少し、あの時の感情を思い出して不機嫌になる俺。それを仁衣菜ちゃんに見透かされていたのかと思うと更に気分が悪い。だから、言い方も冷たくなった。
「どんな顔したって?」
「~~~~ッ……それに、普通のお隣さんはあんなに密着したりしないし……」
「質問に答えてないし。お隣さんの由比子は酔っ払ってたんだから、送ってあげるの当然でしょ」
消え入りそうな声で涙目になりながら、「私だって酔ってましたよ……?」と、仁衣菜ちゃんは反論する。だけど、それも計算だよな? 女ってそういう生きもん。さっきの店員の女の子と一緒。わざとシュン、としたり。今の仁衣菜ちゃんみたく目に涙溜めてみたり。
そういうのって男心くすぐるもんな。