にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 由比子は誰と話をしているんだろう。やっぱり火伊さんだろうか。火伊さんがもし家に入ったのだとしたら、二人きり? 夜に女の家で二人きり? そんなのすることと言えばひとつしかない。




 俺だってあの時、由比子の部屋に思いがけず、泊まってしまったとき、由比子の腰痛がなければきっとキス以上のことしてた。




 もし……火伊さんと由比子がキスとかしてたら……俺とのキスとは意味が違うよな、とか考える。友人以上恋人未満だったら、気持ちが通じあえばキスには意味がある。『好き』とか『愛してる』とか込めるキス。



 そんなキスをしてるのかな。




 俺の脳内で火伊さんが由比子のスレンダーな身体に触るのを想像した。小ぶりなブラが顕になると彼はブラの紐をそっと下ろす。それと同時に近づく二人の顔。近づく唇。ゆっくりと閉じられようとしている瞼。




 由比子は押し倒されて。だけど彼女は火伊さんの首に手を回す。火伊さんの手はスカートの中に滑り込む。そんな様子はとてつもなく艶かしくて。そんな音のない世界が俺の瞼に映った。




 二人が全裸になって抱き合うとき、俺のスェットの下は三角の屋根を作る。既にガチガチ。堪らず、ソレを出して扱いた。こんなのいつぶりかな。隣の情事を想像して一人でするって……どんだけ飢えてんだ、俺。




 仁衣菜ちゃんとシたのはそんなに前じゃなかったような気がするけれど。冷静な考えは吹き飛んで、手が勝手に動いた。




「くぅッ……ぅ……はぁッ……ぁ」

 勢いよく飛んだ濁った白いモノを自分ひとりでせっせと処理するのは虚しい、と学生時代の気持ちを思い出した。そういえば、昔は純粋だったあの頃は、こんな気持ちあったよな、俺にも。




 女がどんな視線を俺に向けてるか大体わかるようになってからは自慰なんて事自体、忘れてた。俺とシたいって女がいるのに一人でスるなんて有り得ない、と思ってた。




 でも、あったんだな、こんな気持ち。欲望はあってもその女じゃないと、みたいな。白い液体を拭いていると涙が溢れて手が止まる。どうして今まで気づかなかったんだろう、自分の気持ちに。





< 196 / 281 >

この作品をシェア

pagetop