にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「火伊さん……」
私はディスプレイの前で固まってた。ディスプレイに映るビーグルは雪の中を走ってきたのか耳や鼻の頭が赤くて時折、鼻を啜っている。ディスプレイの向こうの彼は言う。
『由比子さん、本当は……心配で来たなんて嘘です。いや、嘘じゃないです!』
……どっちやねん。彼のこういうわけわかんないこと言うところに私はクスっと笑ってしまう。さっきまで泣いていたのに。向こうに私の吹き出した声が聞こえないように口を隠した。
『あの、半分ホントで半分嘘、です。心配はしたけど、それよりも由比子さんに会いたかった。顔、見たい、です……』
ビーグルが好きかどうかは別にして、そういうふうに言われれば私だって女の子。ちょっと嬉しいし、ちょっとだけ元気出た。
でも、顔とか言っても。泣いたから私の顔は人様の前に出れるような顔してない。だって化粧が崩れてきっと酷い顔してる。でも、わざわざ来てくれて顔も見せないまま帰すのも悪い気がした。
「火伊さん……ちょっと待ってて」
暫くしてから玄関のドアを開けた。
「え、あれ。由比子さん……?」