にゃんこ男子は鉄壁を崩す
私もビーグルの横に腰を下ろした。
「由比子さん……? 俺、隣にいていいんですか」
「いいんじゃない、座るぐらい。立ってるの疲れたし」
鉄壁の私としてはちょっと大胆な行動だったかもしれない。玄関口で二人座ると少し狭い。だから、横向くとか有り得ない。そのまま玄関の床を見つめて話しだした。
「火伊さん、私さ……」
「それって俺にとって良くない話ですね」
「何で話す前からそういうこと言うかな」
フフ、と笑いを零すビーグル。私は横を向く勇気がないので横目でチラリと彼を見た。どこか寂しそうだけど私の緊張をほぐそうと笑顔を作っているのがわかる。その間抜けな顔と笑いは私のツボで。イチイチ、私のツボを突くビーグルにまた笑いが漏れた。
彼の優しさが心に染みて、胸が痛い。でも、このちょびっとだけ和やかムードならば少しだけ話しやすい。ビーグルには悪いけれども。
「私、好きな人いるみたい」
「みたいってどんだけ由比子さん、鈍感なんですか」
「……好きな人に向かって鈍感とか失礼じゃないの。繊細とかなら言われたことあるけど?」
今度は私がおどけて見せた。繊細ってホントは滅多に言われない。見た目サバサバしてるとか言われるし。『意外』と繊細っていうのは気のおける友達が『たまーに』言ってくれる。
「キスを受け入れている時点で由比子さんは小宮さんが好きなんです」
自分よりも私のことを理解してくれているらしい、ビーグル。
なんか悔しいな。