にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 私の気持ちをはっきりと代弁するビーグルに恥ずかしいやら申し訳ないやら。私は至近距離のビーグルを見ることができず、床に人差し指を擦りつけてグリグリした。




 恥ずかしい気持ちをどうしていいかわからない私の照れ隠しのようなものかもしれないな。




「俺、由比子さんがちゃんと自分の気持ちにケジメつけないままなら諦めませんよ?」




「!」

「何スか、その顔は」



「いや、見かけ通り、しつこい男だな、と思って」




 そう言うと私は声を立ててキャハハ、と笑った。だって可笑しくて。ブスっと膨れさせた頬が可愛くて。思わず、撫で回したくなるこの感情は『好き』とは違うんだよね。




 こんなにビーグルを可愛いと思うのに彼を『好き』じゃないなんて。なんて勿体無いんだろう。彼を好きだったら、どんなに楽か。彼を好きになれたらどんなに幸せだろうか。



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