にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「へッ……?! それ、なんか関係あんの?」
私の疑問にあずちゃんは箒の柄で私の頭をコツンと叩く。私は頭を押さえてあずちゃんを見た。
「バッカね、アンタ。アンタがチャラい奴をカメムシくんみたいな目で毛嫌いするから火伊さん真面目になったんじゃない」
「そんな態度してないよ! 社会人として常識ある言動を……」
火伊さんは私の箒を奪い取って私と火伊さんのあいだに箒で見えない線を引いた。
「そっからこっちビシーっと線引いて入れてくんないじゃないスか」
「それは! 取引先の相手だからでしょ!」
これは当たり前だよ! 取引先の相手と恋愛なんてしたら、取引しにくくなるじゃんか! そう言う意味で今までもあずちゃんがなんと言おうともビーグルの誘いを断り続けてきたんだから。
「でも、昨日は玄関入れてくれたじゃないスか。チャラいままの俺だったら玄関口にも出てくれなかったでしょ?」
「う、うぐ……」
それは確かに。百貨店に勤める友達が話していたような感じだったら、私は絶対にインターホン越しに話をして終わりだったと思う。でも、玄関まで何故入れたかと言えばなんとなく彼の誠意を感じていたからかもしれない。