にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「……今日もよろしくお願いします」
以前までの人懐こい笑顔は消えて、今の仁衣菜ちゃんはどこか他人行儀だ。私も気まずさを覚えるけど、とりあえず「よろしくお願いします」と返す。
沈黙が店内を支配しようとするけど、私は仕事だし、と割り切ることに決めた。
「仁衣菜ちゃん、これ、検品してくれる?」
「はい」
彼女が返事をして仕事をやり始めたので、これで仕事にはそんなに影響しないかも、と安堵した。こんな時、お客さんがたくさん来てくれれば少しは空気も変わるのだけど、こういう日に限って店内には一人もお客さんがいない。
仕方なく私も日々の売上実績を纏めることに集中することにする。電卓とボールペンを走らせる音、そして仁衣菜ちゃんが検品をしながら値札をつける音だけが店内に響いていた。
こうなると私は私情などどうでもよくなる。だけど、誰もがそういうわけじゃない。
そう、仁衣菜ちゃんも。