にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 ミィコの茶色い髪の毛をグシャグシャにして「いや! えと、用事あるし! 帰る! 今日はちゃんと寝てんのよ!」と言って彼の寝室を出ようとした。




 なんとなく! なんとなくだけど、上目遣いがさっきの上目遣いとなんか違う気がして。私は自分の身の危険を感じたのだ! だから、慌ててそう言ったんだけど遅かったらしい。




「待って、由比子……」

 手首を掴まれて。意外と細い私の手首はいとも簡単にミィコに捕まってしまった。手首を引っ張られれば当然、私の身体もミィコに引き寄せられるわけで。




「……どこ、行くの。由比子……」

「どこって……」

「火伊さんとこ……?」




 そうか、ミィコ、さっきの私とあずちゃんの電話での会話の内容は全部聞こえてたわけじゃなかったのか。どうやらビーグルと連絡をとっていたと勘違いしているらしい。




 ……でも! 

 仁衣菜ちゃんの洋服をクローゼットに仕舞っているミィコと同じく万が一ビーグルと連絡をとっていたとしてもミィコに責められるようなことは一つもない。




 だけど、ミィコの顔は私を責めるように険しくなっている。




 その険しい顔ってアレじゃないの、君。




 ミィコ、君、もしかしてビーグルに嫉妬しているのかい?



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