にゃんこ男子は鉄壁を崩す
でも、流石にこの状態で焦らす、とか。自分の身が危険だわ。
「……ミィコ、あの……」
ミィコの私がグシャグシャにした髪が私の顔にかかった。キス、されるのかな、とか思ったけど。キスぐらいなら、と思ったけど。何度目のキスかな、なんて考えたけど。
近づくミィコの顔を見ながら目は瞑らなかった。まだ彼の顔を見ていたかったから。だけど彼の唇は私の唇を通り過ぎて私の顔の横のシーツにポスっと顔を埋めてしまった。
「…………?」
「なんでこんなときに風邪、なんか……」
「ん……?」
「由比子、あんまり嫌がってないこの時ってかなり貴重でしょ。チャンスなのに……身体が言うこときかない……」
私に覆いかぶさっていたミィコはゴロン、と仰向けになって私と同じく天井を眺める格好になった。というか何故か私がミィコに腕枕をしてあげている。どんだけ私って男前……
このシチュエーションは全然萌えないけれど、ミィコの崩れた茶色い髪の毛があたっている腕はくすぐったい。というか照れる。ちょっとこのままでいたいな、という感情まで出てきちゃうし。
飼い猫が「おいで、おいで」をしていないのに、私の横に来て私の腕を枕代わりにしたときの気持ちに似てる。その対象はすごく愛しい存在で。このままでいたい、と思うんだ。
やっぱり君は猫だね。