にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「ねぇ、由比子……」
天井を見たままミィコは私に問いかける。私も天井を見たまま答えた。
「んー?」
「火伊さんとこ行くの……?」
流石にもう誤魔化すとか。いくらドSでも。ドSの前にわたくし、人でありますから。耳に届くその声はどこか不安げで。また意地悪したくなっちゃうんだけど。うん、でも質問には答えてあげよう。
「行かないよ」
「そっか……」
そう言うとモソモソと起き上がって布団に戻るミィコ。私も起き上がってその様子を見てた。布団に再び入ったミィコの顔はまだ赤いけれど、ニコニコしている。そしてミィコは何故か私の手首を掴んだまま眠りに落ちた。
ナニコレ。
しっかりと掴まれた手首。ずっとここにいろ、とか……そういうこと? 呆れながらもベッドサイドに腰掛けてその可愛い寝顔を見つめた。
「仕方ないなぁ……」
少しだけなら。
ミィコが熟睡するまでの間、少しの時間なら傍にいてもいいかな……
今宵は気まぐれ猫の心情が少しだけ垣間見えたのだった。