にゃんこ男子は鉄壁を崩す


「ああ、急いでるんだ、由比子」

 見りゃわかるでしょうが! 私は自分の鞄を見つけ出してミィコの部屋を出ようとすると腕を掴まれてちょっとイラッとしてミィコの顔を見た。だって急いでるのに引き止められるとか有り得ないんだけど!




「急いでるんなら、サンドイッチにしたから持って行って。店で食べればいいじゃん?」




 おお、いつものミィコの笑顔だけど、なんだか天使に見える。後光が射してないかい? 羽が生えていないかい? 君の後ろに。




 お腹はすいてんのよ。昨日、ご飯食べないまま寝ちゃったし。朝ごはんも食べないまま電車に揺られてそのまま仕事始めたら、流石に倒れちゃうかも?! と思ってはいたんだ。




「ありがとう、ミィコ……」

 ちょっと涙ぐんだ私。彼の優しさが嬉しくて。一人暮らしが長い私にはそんな優しさが心に染みる。付き合ってたってこういうのは滅多にない。




「じゃあ、ご褒美ね」




 いつものこと、よろしく、チュと音を立ててニコニコした彼にやっぱり怒れない私。だって、サンドイッチもらったしね?



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