にゃんこ男子は鉄壁を崩す
 

 ミィコの作ってくれたサンドイッチを持って私は自分の家に戻って支度を始めた。洗面台の前でカットソーを脱ぐとふと私の動きが止まる。ミィコに掴まれた手首。自分の手首を見たら、『行かないで』というミィコの懇願する顔を思い出して急に恥ずかしくなる。




 洗面台の鏡の中の自分と目が合ってアワアワと一人で何故か照れて焦って馬鹿みたいに服を脱いだ。




「…………えへッ……」

 でも、あの懇願するようなミィコの顔って言ったらもう! 可愛いのなんの! ドSの大好物の顔するんだから! 思い出してまたひとり、ニヤけた。





 ――――今日の朝は明るい。寒いけど爽やかだ。昨日、降った雪は降り積もっているけれども、空は青く高いところにある。雪道は歩きにくいほどに雪が積もっているけれど、それさえもなんだか新鮮で。




 まだ誰も歩いていない真っ白な雪道をズボッズボッとブーツで穴を開けながら歩いた。




 でも、やっぱり。

 店の前までくればあずちゃんの鬼の形相を思い浮かべてげんなり、とする。なんて言い訳しよう? いや、鋭いあずちゃんのことだ。言い訳なんて通用しないに決まってる。




 ここは謝り倒すしかないかな?


< 233 / 281 >

この作品をシェア

pagetop