にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「そこに突っ立ってると邪魔なんだけど」
「はッ! あずちゃん!」
ややや、や! やっぱりあずちゃんの顔には悪魔の顔が! 鬼の形相が!
ヒィィィィ…………
あずちゃんは私の首根っこを掴まえてズリズリと店の中に引き摺り込んでいく。堪らず私は「ぐ、ぐるじぃ、あずちゃん……」と言った。
「昨日の約束すっぽかしたのには何か理由があるのよねぇ? 私との約束ドタキャンするなんていい度胸ねぇ?」
謝り倒そうなんて考えていたのに、休憩室に向かうあずちゃんの威圧感のある後ろ姿に白々しい言い訳がいくつも頭に浮かぶ。
ええーと? 昨日は電車が止まっちゃってとか……いや、雪結構降ったけど止まるほどじゃなかった! そんな嘘すぐにバレる! おばちゃんが危篤になっちゃって、とか? いや、それだと私はなんで今ここにいるんだ!
……今回は決定的に自分が悪いのだからやっぱり謝るしかないんだけど……
「…………え、えへッ……」とか笑って誤魔化してみる。