にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 そしたら、突然ガチャっと玄関が開いたので避ける暇もなく私に激突してしまった。




「由比子……?! 何してんの」

 ドアを開けたのは当然、ミィコで驚いた顔をしている。どうやら廊下での話し声を聞いて玄関のドアを開けたようだ。




「イッタ……」

「大丈夫ですか、相楽さん!」

 野菜が入ったエコバッグを置いて駆け寄ってきた神代さんに苦笑しながらも「いや、全然大丈夫です!」と、言ったけれどもおでこはジンジン痛い。こりゃタンコブできそうだな。




「大丈夫って額から血が出てますよ?」

「えッ……」

 嘘ッ……そういえばジンジンとする場所からタラリと流れる感触。それを触ってみると確かに血が出ていた。




「ああ、ほら。相楽さんハンカチこれあげるから」




 さすが、人妻。用意がいい。ハンカチがサッと出てきて躊躇することなく『あげる』とか言えるって。




「神代さん、お騒がせしました。由比子、ほら、入って」




 私たちの様子にニヤっとした神代さんが目に入る。




 え、まだそういう関係じゃありませんから! まだ、とかちょっとアレですけど! そんな下心なんてないですって! 



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