にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 言い訳しようと神代さんに何か言おうとしたら、ミィコに腕を引っ張られて部屋の中に引きずり込まれた。でも、そこでまたもや私は絶句することとなる。リビングへのドアが開け放たれたそこには仁衣菜ちゃんの黒いパンストが脱ぎ捨てられている。



 こ、言葉、出ないんですけど……

 私が絶句しているのを気にする様子もなく、パンストを拾い上げ、ゴミ箱へポイっと捨てるミィコ。そんなミィコを呆然と見ていた。




「由比子、ほら座って」

 ソファに促された私はストン、とそこへ座ると真っ直ぐにミィコの顔が見れなくて彼の長い指が救急箱を開けて脱脂綿に消毒液を湿らせるのを見ていた。傷口に消毒液が染みると当然痛い。顔を顰めてビクッとしたら、「動かないで」と叱られてしまった、こんな若者に。




 絆創膏のシールを剥がしながら、彼は言う。




「由比子、何の用だったの?」

「あ、あの……」





 ゴミ箱に捨てられた黒いパンストが気になって言葉が続かない。




 本当は君に好きだって言いたいんだよ……?



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