にゃんこ男子は鉄壁を崩す


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「あ、あずちゃん…………」

 今日はクリスマスイヴ。私たちのお店も稼ぎ時。だけど、私の今日の顔はhappyXmasというよりはお盆の幽霊の方が似合っているようだ。




「由比子ちゃん、コワッ! クマできてんじゃん。しかも、何そのおでこ」




「森のクマさんに襲われて……」

「全ッ然、面白くない」

「う……!」

「はいはい、よしよし。告白できなかったのね」

 


 心臓、ひと突き。グサリ。私の様子を見て何も言わなくてもあずちゃんにはわかってしまったようだ。でも、前進したこともある! それを聞いてもらわにゃ! 


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「あー、頑張ったじゃん、由比子ちゃん。あと一歩だね」




「やっぱり言わなきゃダメだよね?」



「何言ってるんスか、由比子さん! 言わなきゃダメに決まってるでしょう! つーか、俺に一度でいいから『好き』って言ってくださぁぁぁい~」


 やっぱり私たちの背後から現れたビーグル。今日も新商品があるらしい。こんなイヴの日にもよく働く忠犬だな、君は。いや、私たちも負けじと頑張ってますけども!




「好きだよ、ビーグル」

 ぱぁ、と顔が明るくなったビーグル。ビーグルにはこんなにあっさり言えんのに、なぁ~~!!!! あ、勿論補足も忘れません。抜け目無いのよ、私って。




「原価下げてくれる最高の営業マンとして」




 ガックリ、と肩を落とすビーグルに私たちは「また頼むね、ビーグルさん!」と言って力強く肩を叩くと恨めしそうに私たちを見るビーグルが可笑しくてあずちゃんと笑った。



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