にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 普通に『彼』と飲んでたらいきなり『チュ』とか軽いkiss。え、と一瞬驚いたけど、そのまま腹の底からマグマのような怒りがドクドク、グツグツ。怒りでもしかしたら髪の毛が逆立っていたかもしれないほどに怒ってた。平手で『彼』の頬を殴りつけて店をあとにした。




 何でッ…………今更…………もう、関係ナイ……はずだった。




 夏に旅行に行ったエジプトで乗ったラクダに舐められたのとおんなじよ! あの時だって顎から鼻の頭にかけて勿論、唇もベローンと舐められた。それとおんなじ! 




 あの時の唇の感触を自分の唇をなぞって思い浮かべると……いや、あの……ラクダじゃなくて『彼』の唇。




「ふ……うくッ……」

 たったこれだけのことで揺れている自分が情けない。どんな顔して彼に会ったらいいのかわからなくていつも夜遅くに帰ってきても起きて『おかえり』と言っていた私は初めて寝たふりを決め込んだ。




 彼氏が帰宅したあと、近くに寄ってきたのが気配でわかる。フッと笑みを漏らして私の前髪を撫でる彼氏。罪悪感でいっぱいになった。



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