にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 夜、会ったらまたどんなことになるかわからない。だから、外で。私が勤める百貨店からほど近いけどあんまり知られていない喫茶店に私たちはいた。挽きたてのコーヒーが鼻をくすぐる。でも、今の私には胃がキリキリ傷んであまり飲めなかった。



「火伊くん……あの、私、結婚したい人がいるの。だから……この間のkissはなかったことにしよ?」



「いいけど、彼氏との間に秘密、いいの? そんなんで結婚できるんだ? もしかして、まだプロポーズもされてないんじゃないの?」



 私の悩みを見透かしたような目つき。いつもの上目遣いの可愛い目はどこへやら。自分のチャームポイントの使い分けをわかっているオトコだ。その眼力には可愛くなくても魅入られてしまうようだ。


 だけど、もうこの男にはグラつきたくない。そう思うのが精一杯で。



「……ッ」

「彼氏にイケナイ秘密、いいの?」

 重ねて同じことを言う彼に何も言えなくなってしまう私。
 決して言ってはイケナイ秘密なんか作って結婚なんてできる?





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