にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「私たちって鬼だよね」
「ん、火伊くんのこと? 経営者は心を鬼にしないとっていつも言ってるでしょ! 余計な出費はしない! 原価はとことん下げさせる!」
クリスマスの後もしっかりと値段交渉するあずちゃんと私。あずちゃんの値引き交渉は半端じゃない。
「…………」
あずちゃんは運ばれてきたぷりぷり海老の美味しそうな身をうにのソースに絡めて大きく口を開けて頬張った。美味しそうだね、海老さん。
うん、その心意気で生うにとぷりぷり海老のパスタとシフォンケーキまで頼んでしまったのね。でも、いいよ、いいよ! パスタぐらい。君はあの私がぎっくり腰になったとき、雪かきを随分と頑張った!
涙を飲んで私は一つランクを落としてカルボナーラのランチセット (デザートナシ)780円だ。カルボナーラだって家で食べるよりはプロが作る料理だから数倍美味しい。
うん、よし! 満足した。食後には二人でコーヒーを飲んでいる。あずちゃんはかぼちゃのシフォンケーキを生クリームをつけながら、ゆったりと食べる。
「由比子ちゃん、あーん」
「あーん」
「あーん」なんてしてもらったのは何年ぶりだ。えーと前の会社に勤めていたとき付き合った彼がしゃぶしゃぶを『フーフー』してくれて今みたいに『あーん』としてくれた。私も若かったので恥ずかしげもなく大きく口を開けていたのを覚えている。
いや、今も開けたのだけれど。いやいやいやいや!! そういえば、ミィコにも食べさせてもらった記憶が……「ん、美味しい」デザートの美味しさに思考が止まってしまう。
「かぼちゃにはビタミンが豊富だよ。疲れをとってくれるの。毎日、ヤりすぎなんじゃないの、由比子ちゃん」
「ヤ、ヤりすぎとかッ! 昼間から……」
「いいじゃない、皆、自分たちの話に夢中よ」
「あ、あずちゃん、私、豊胸手術したほうがいいと思う?」
「は? なんで?」