にゃんこ男子は鉄壁を崩す


「ナニコレ。のろけ?」

「違うって、あずちゃん!」

「じゃあ、何」



 私はそっと彼女に近づき耳打ちする。恥ずかしすぎる言葉はおそらく誰も聞いていないと思っていてもコショコショ内緒話の声になってしまう。



「このシチュエーションあんまり新鮮じゃないの」




 私の顔を見るあずちゃんの表情は冷たい。氷のように。もう春だよ、あずちゃん! その顔、いただけない!




「ナニソレ。やっぱりのろけ?」

「違うって、あずちゃん! 四つん這いが多いんだよ、セックスの時!」


 ちょっと声が大きくなってしかも立ち上がってしまったので、慌てて口を押さえて周りを見渡したら、驚いた顔の客たちが私を見ている。




「いいじゃん、バックって気持ちいいでしょ」

「イイけど……いや、良くないの!」


 今度はコソっと二人で。それでも周りが私たちの声を盗み聞きしているようで気になって仕方がない。だけど「下手なんだ、にゃんこくんは」とあずちゃんが言うのでまた反応してしまった。



 『下手』というところに過敏に反応してしまった私。ミィコは下手なんかじゃなくて、いや、寧ろとても巧妙に私の弱いところをついてきて……「え、上手い……いや、違うって!」だから、いつも私は……って何を口走ろうとしてるんだ、私は!



 そんなことは問題じゃないのだ!




「私の胸がちっさいから四つん這いにさせられてるんじゃないかって……」




「ははーぁ。かき集めるのがめんどくなっちゃったんだ」




 か、かき集めるとか酷くない? 間違ってないけどさ。脂肪の少ない私の胸を揉むためにかき集めるには結構労力使うと思うよ?




「め、めんどい、とか……人が真剣に悩んでるのに」




「だから、豊胸……?」

「うん」



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