にゃんこ男子は鉄壁を崩す
……と思いつつも私もここは大人な対応。
「あはは……そうですか。ありがとうございます」
こうやって愛想笑いをして波風を立てないように、ネ?
私の愛想笑いを見て、にこにこ顔の仮面男ビーグル犬(勝手にそう呼んでいる)のこのオトコはやっと商品のサンプルの話を始めた。
「……で、いいですかね、由比子さん」
「えッ……あッ……待って! どれ!」
危ない、危ない! 見蕩れさせておいて商品買わされるのはコイツの常套手段だ! 巧く乗せられるとこだった!
「聞いてなかったんスかー」
ブーと頬を膨らませながらももう一度説明をしてくれたビーグル犬。どうやら商品のサンプルはこの焦茶色の手帳をさしているようでシンプルな革のカバーには女の子らしい赤い花びらがデザインされてある。
その革の材質やワンポイントの赤い花びらに職人はこだわって作ったらしく、それを熱心にもう一度説明してくれた。軽いとこは嫌だけれど、こういうモノの良さをわかって、惚れ込んでそれを売りたい、という情熱があるところはわたし的には好きだ。
「あ、由比子さん」