にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 よし、決めた。少し時間はかかるけどまだ夕方だし、作ろうと思えば作れる時間だ。サンマくん、君を食べよう。

 手を伸ばそうとした瞬間――――横から腕まくりをした手が伸びてきて私が今買おうとしていたサンマくんが入ったパックをとって行った。思わずそのサンマくんを目で追う私。

 サンマくんは私のカゴではなくて前を歩く背の高い男の子のカゴの中へと消えて行った。いや、消えてないよ。カゴの隙間からしっかりと私に食べてほしかったと嘆いているサンマくんがチラチラと見えている。


 だからと言って『そのサンマくんは私に食べられたいのよ! だから返しなさい!』などとは口が裂けても言えない。


 言ってしまったら変な女だと思われて終わりだ。


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