にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 そう思うのも無理ないでしょ、ビーグル犬よ。


 あずちゃんとせっせと庭の草むしりをしているのはビーグルだった。私の姿を見つけると立ち上がるビーグル。軍手の甲の部分でキラリと光った汗を拭った。軍手にスーツは流石に合わないと思うよ? 


「あ、おはようございます、由比子さん!」


 私が庭に近寄ると、元気に声を上げて挨拶をするビーグルに私は片方の耳を大げさに塞ぐ。


「何してんの、アンタは。そんなことしたって仕入れ増やさないわよ」

「いやいや、そんなこと言わずに~って由比子さん! どして昨日電話に出てくんないんスか! すっごい心配したんですからね!」


「で? なんだったの、仕事の話?」



 さっきまでキャンキャン鳴いていた犬が一瞬のうちに黙る。その顔は犬ではわからないだろうけど、コイツは人間だからね? 真っ赤っかになったのがよくわかった。



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