にゃんこ男子は鉄壁を崩す


「来ちゃいました」

「どうしたの? 何かトラブル?」


「いえ、あの……顔が見たくて」


 隣の仁衣菜ちゃんが口に両手をあて目を輝かせ、何か言いたそうだ。『素敵!』とか『カッコイイ!』なんて彼女の声が聞こえてきそう。


 でも、違うのよ! ビーグルは顔だけなんだから!


「由比子さん……こういうの、迷惑です、か……?」

「……うん、少し、ね」


 かなり傷ついた顔をするビーグルに私の中の恋愛指数が急上昇する。だって私はそういう切なそうな顔に弱い。可愛い、という感情の他にももっと虐めてやりたくなる。

 私の言動で傷つく様を見て愛されてると実感したいんだろうか。


 ……ビーグルだって仕入れを増やしてもらうための演技かもしれないのに。



 
< 73 / 281 >

この作品をシェア

pagetop