にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「来ちゃいました」
「どうしたの? 何かトラブル?」
「いえ、あの……顔が見たくて」
隣の仁衣菜ちゃんが口に両手をあて目を輝かせ、何か言いたそうだ。『素敵!』とか『カッコイイ!』なんて彼女の声が聞こえてきそう。
でも、違うのよ! ビーグルは顔だけなんだから!
「由比子さん……こういうの、迷惑です、か……?」
「……うん、少し、ね」
かなり傷ついた顔をするビーグルに私の中の恋愛指数が急上昇する。だって私はそういう切なそうな顔に弱い。可愛い、という感情の他にももっと虐めてやりたくなる。
私の言動で傷つく様を見て愛されてると実感したいんだろうか。
……ビーグルだって仕入れを増やしてもらうための演技かもしれないのに。