にゃんこ男子は鉄壁を崩す
だから、諦めて「なぁに?」と平静を装って少しの笑顔を作って聞き返した。
「ハイッ! あの! では、早速質問です! 一つ目!」
「……どうぞ」
一つ目って……そんなに何個もあんのか。
一体、どんな質問する気……? 意外と壊れやすい私の繊細なガラスのハートはこの子の質問に耐えられるかしら。
「えーとですね、この方は取引先の営業の方ですか」
「ああ、そうだ。紹介してなかったね。ノースファクトリー『Polish』の火伊 久瑠さん。こちら期間限定で入ったバイトの女の子の北村 仁衣菜ちゃんです」
そういえば紹介してなかったわ。私としたことが。バイトと言えど、何度も顔を合わせるだろう。紹介しておかなくては。ついでに火伊くんの興味がこの可愛い仁衣菜ちゃんに移ってくれれば文句ないんだけど。
「火伊です。北村さん、短い期間ではありますが、よろしくお願いします」
さっきのしどろもどろ切ない顔はどこへやら、ビーグルの顔は営業の顔に戻っていて名刺を仁衣菜ちゃんに差し出した。
「え! 私、名刺なんて持ってないですよ! えーと……北村 仁衣菜です。至らない点も多いとは思いますが、よろしくお願いします」