にゃんこ男子は鉄壁を崩す


「あれ、由比子。今、帰りなんだ」

「うん。小宮さんも?」


 わざと『小宮』というところを強調してやった。だってどうして年下のあなたに呼び捨てで呼ばれなきゃいけないのかしら? だからそれを意識してほしくてわざと『小宮さん』と言った。だけど小宮さんはそんなこと気にする素振りを見せずに私のカゴを覗き込んだ。


「由比子んちは鍋かぁ。いいな、俺も行っていい? お隣さんだし、お近づきの印に」

 それはもてなす方が言うことでしょうが。つーか、どうして小宮さんをウチに入れなきゃイケナイの!

「イヤです」

「ケチ。サンマとビールあげたのに」


 それを言われるとイタイ。かーなーり、イタイ。

 何かお返しにできるものはないかと私も考えていたから。


 だけど家はイヤ! 



< 81 / 281 >

この作品をシェア

pagetop